「トイレにもいけない」
「誰にも相談できない。プレッシャーがつらい」
「体調崩したら終わり」
これは、実際に一人薬剤師の”あるある”です。
薬局やドラッグストアなどで、一人きりで薬剤業務を担う「一人薬剤師」。
業務量はもちろん、精神的なプレッシャーや孤独感も大きく、
「もう限界…」「辞めたい」と感じる人は少なくありません。
とくに「ワンオペ薬剤師」は心理的に休憩も取れず、
何もかも一人でこなす状況でやりたくないという薬剤師が増えている印象です。
私自身、一人薬剤師として600枚/月の店舗を任された経験があり、
その中で感じた「きつさ」「工夫」「限界」もありました。
この記事では、
- 一人薬剤師が「きつい・つらい」と感じる理由
- 実際の現場で感じたリアルな声と体験談
- そして、それでも続けるために役立つ対処法
をお伝えしていきます。
「今つらいけど、どうにかしたい」
そんなあなたの支えになる内容になれば嬉しいです。
一人薬剤師とは?
勤務形態と求められる役割
「一人薬剤師」とは、その名の通り薬局やドラッグストアで、薬剤師が1人だけ配置されている勤務形態を指します。
日中のすべての調剤・監査・服薬指導・発注・在庫管理・帳簿記入・加算入力まで、
すべての業務を1人でこなす必要があるのが特徴です。
また、基本的には管理薬剤師として勤務しており、薬局運営そのものを1人で背負うことになります。
ワンオペ薬剤師との違いは?
「ワンオペ薬剤師」も一人薬剤師と似ていますが、現場では使い分けて使われます。
これは単に薬剤師が一人勤務というだけではなく、
薬局内に他スタッフ(事務・受付)が誰もおらず、本当に“一人きり”で業務を回す状態を指します。
一人薬剤師:薬剤師が1人だけ配置されている勤務形態
ワンオペ:薬剤師だけで薬局業務すべてをこなす“完全ワンオペ”状態
ワンオペのほうがすべての業務を一人ですることになるので、大変です。
一人薬剤師のなかでも、事務スタッフがいるかどうかで“しんどさ”は大きく変わるのが現実です。
実際に働いた人なら、ここが地味に一番大きいポイントかもしれません。
一人薬剤師が「きつい」「つらい」と感じる5つの理由
① トイレも行けない、昼休みも取れない
一人薬剤師あるあるの代表格が「休憩が取れない問題」です。
休憩の途中で患者さんが来局して食事が途中になってしまうことが多いです。
「のびたカップ麺」は誰もが一度は経験しています。
外来が途切れなければ、昼食どころかトイレにも行けない状況が普通にあります。
特に事務スタッフもいないワンオペでは、受付・会計・電話対応まですべて1人。
業務が常に途切れず、「今日はおにぎりだけで一日が終わった…」という日も珍しくありません。
② ミスが許されない、でも誰にも確認できない
調剤業務は常に正確さが求められますが、確認する相手がいないのが一人薬剤師のつらさです。
「これ、本当にこれでよかったかな…?」と不安になっても、誰にも聞けない。
プレッシャーを抱えながら業務をこなす日々は、精神的にかなりの負担になります。
③ 体調不良でも休めない不安
風邪や発熱があっても、代わりの薬剤師がいないため休めないことが多くなります。
実際、「自分が休んだら営業できない」という状況は珍しくありません。
そのため、体調不良でも無理して出勤し、回復が遅れて悪化するケースも。
心身をすり減らしやすい環境です。
④ すべてを背負う“責任の重さ”
薬の発注・在庫管理・加算入力・帳簿作成・監査対応・クレーム対応…
やるべきことは多岐にわたり、誰も分担してくれる人がいない。
患者の安全、薬局の信用、法令順守──
すべてを1人で抱える責任感が、じわじわと精神を削っていきます。
⑤ 孤独。誰にも悩みを共有できない
一人薬剤師は同僚がいない孤独感もつらいポイントです。
患者さんや業者さんと多少の会話はあっても、業務の悩みを共有できる人がいないというのは想像以上にストレスになります。
相談できる先輩や同僚がいないと、些細なことでも一人で抱え込みやすくなり、 burnout(燃え尽き)に繋がりやすいのが現実です。
一人薬剤師に向いている人の特徴とは?
一人薬剤師は大変な面も多いですが、人によっては慣れてくると働きやすく感じることもあります。
一人薬剤師に向いている人の特徴を紹介します。
① 調剤室の人間関係が苦手な人
複数薬剤師の職場では、人間関係のストレスがつきものです。
「チームワークが合わない」
「会話に気を使うのがしんどい」
そう感じる人にとって、一人で黙々と働ける環境は心地よく感じられることもあります。
患者との会話だけで十分、というタイプには合っています。
② 数字を伸ばすのが好きな人
一人薬剤師の店舗は、自分の工夫がそのまま“売上や効率”に反映されやすいのが特徴です。
- 処方箋枚数の増加
- 待ち時間の短縮
- 在庫ロスの削減
- OTC販売数の改善
- 処方箋枚数の増加
- 加算
- 在庫ロスの削減
- OTC販売数の改善
など、自分の裁量で改善を積み上げられる環境を楽しめる人には向いています。
③ マイペースに作業したい人
誰かと足並みをそろえる必要がなく、自分のペースで仕事を組み立てられるのも一人薬剤師のメリットです。
- 一度に複数の業務をこなすのが得意
- スケジュールを柔軟に動かせる方が落ち着く
- 指示や干渉を受けずに、自分の考えで仕事を進めたい
- 一度に複数の業務をこなすのが得意
- スケジュールを柔軟に動かせる方が落ち着く
- 指示や干渉を受けずに、自分の考えで仕事を進めたい
こんなタイプの方は、一人薬剤師の働き方に適応しやすいでしょう。
もちろん「向いている=楽」というわけではありませんが、
適性がある人にとっては、むしろ快適でストレスの少ない働き方になる可能性もあります。
【体験談】600枚/月の一人薬剤師を経験してわかった現実
私が一人薬剤師として働いていたのは、月600枚程度の処方箋が来る薬局でした。
1人で業務が回らないときの“冷や汗”
とくに忙しいのは繁忙期の冬でした。
一包化に小児の散剤、水剤、軟膏MIX。重い処方が来ても後回しにできない。
誰かに頼みたくても誰もいない。
患者が続けて来たときには、受付だけで時間が過ぎていく。
患者が待合にいなくなっても、山積みのかごを時間までに用意しなければならないので、一息つくこともできない。
1つの処方ミスが重大な結果に繋がる業務で、誰にも確認できない不安と背中合わせでした。
昼休憩は呼ばれなければラッキー
昼休憩は途中で呼び出されて小刻みに取ります。
患者が来なければ休める。でも来たら終了。
昼食は選ぶ時間がもったいないので、毎日同じものを食べていました。
たまにカップ麺を食べようものなら、3分待っている間にのびています。
「のびたカップ麺」は、薬剤師あるあるだと思います。
メンタルを保てた“支え”もあった
私のメンタルの支えは同期の存在でした。
ドラッグストアは同期が多いので同じタイミングで、一人薬剤師になった同期の存在は本当に救いでした。
困った時に相談したり、仕事終わりに愚痴を言い合ったり。
一人薬剤師は孤独でしたが、同期の存在で乗り来られました。
これは大手のメリットといえます。
もちろん、つらい日もたくさんありました。
「風邪ひいたけど、代わりがいないから出勤した日」
「帰宅してからもヒヤリハットが頭から離れなかった日」
そんなつらい日も山ほどあります。
このあとのパートでは、
「それでも一人薬剤師を続けるためにできる5つの対処法」を紹介します。
「辞めたい」「限界かも」と感じている方の参考になれば嬉しいです。
一人薬剤師を続けるための5つの対処法
① 業務導線とルールを整備して負担を軽減
一人勤務の薬局では、「どこに何があるか」「どんな手順で動くか」を徹底的に最適化することがカギです。
たとえば、
- 効率的な調剤ができるように導線を設計
- 定型処方は分包パターンをプリセット化
- 発注ミス防止に“付箋チェック”などアナログ補助
- 効率的な調剤ができるように導線を設計
- 定型処方は分包パターンをプリセット化
- 発注ミス防止に“付箋チェック”などアナログ補助
など、小さな工夫が業務効率を大きく変えます。
仕組みでラクする意識を持つことが大切です。
② 外部とのつながりを作って孤立を防ぐ
孤独感がつらさを増幅させるので、他の薬剤師との接点を意識的に持ちましょう。
たとえば、
- 本部薬剤師と定期的にチャットや電話で情報共有
- グループウェアで他店舗と日報交換
- SNSや薬剤師向けコミュニティで相談できる場を持つ
- 他店薬剤師と定期的にチャットや電話で情報共有
- SNSや薬剤師向けコミュニティで相談できる場を持つ
「自分だけじゃない」と思える環境は、精神的な支えになります。
③ ピーク時間を見据えた“やらないこと”の選別
全部を完璧にこなそうとしないことも大切です。
一人薬剤師では、業務の優先順位をつけ、やらないことを決める勇気が求められます。
- 訪問者が多い時間帯には、投薬に全集中
- 分包の時間などを考慮して調剤の順序を最適化
- 簡略化できる加算入力や帳票作業はまとめて処理
「いま大事なのは何か」を判断できるようになると、気持ちにも余裕が生まれます。
④ 体調管理と“休むための準備”をしておく
体調不良=営業停止になりやすい環境ですが、自分を守る準備はできます。
- 代替薬局・応援薬剤師の連絡体制をあらかじめ確認
- 薬歴や業務ログを残して、他人でも引き継ぎやすいように整備
- 体調に違和感がある段階で早めに休みの相談をする習慣
「無理をしない仕組み」があるだけで、心の余裕が全然違います。
⑤ 限界を感じたら、異動や転職も選択肢に
本音を言えば、一人薬剤師が全員に向いているわけではありません。
合わないと感じたら、無理をせず環境を変える選択も必要です。
- 同じ法人内で“複数薬剤師体制の店舗”へ異動できないか相談
- ワンオペのない薬局への転職を検討
- 派遣やパートなど、ライフスタイルに合う働き方を選ぶ
- 同じ法人内で“複数薬剤師体制の店舗”へ異動できないか相談
- ワンオペのない薬局への転職を検討
- 派遣やパートなど、ライフスタイルに合う働き方を選ぶ
転職=逃げではありません。
「自分を守るための戦略的な判断」として、堂々と考えていいのです。
転職相談は無料なのでとりあえず登録して話を聞いてみましょう!
薬剤師満足度の高いファルマスタッフがおすすめです。
ファルマスタッフについては他の記事で詳しく解説しているので見てみてください。

「つらい」と感じたら知っておきたいこと|辞めどきのサインとは?
「自分に向いていない」と感じたら、それが答えかもしれない
一人薬剤師が“合う人”と“合わない人”がいるのは事実です。
どれだけ頑張っても、「自分はこの働き方に向いてない」と感じるなら、
それはあなたの弱さではなく“特性”の違いです。
- プレッシャーに極端に弱い
- 対人業務よりチーム連携を重視したい
- 一人で抱え込む性格で疲れやすい
- プレッシャーに極端に弱い
- 対人業務よりチーム連携を重視したい
- 一人で抱え込む性格で疲れやすい
こうした特徴があるなら、無理に続ける必要はありません。
無理して続けることが“善”ではない
「せっかく採用してもらったし…」
「これくらい我慢しなきゃいけないのかも…」
そうやって無理を続けた結果、心身を壊してしまう薬剤師を私は何人も見てきました。
責任感の強い人ほど、自分を追い込んでしまいがちですが、
“辞める”=“逃げ”ではなく、“守る”選択です。
「辞めどき」は“体調”と“気持ち”が教えてくれる
以下に一つでも当てはまるなら、黄色信号です。
- 朝起きた瞬間に涙が出る
- 風邪をひいても、誰にも言えずに薬局へ向かう
- 患者さんと話すのが怖くなってきた
- ミスが怖くて、手が震える
- 「辞めたい」が口ぐせになっている
これらは限界のサインです。
- 朝起きた瞬間に涙が出る
- 風邪をひいても、誰にも言えずに薬局へ向かう
- 患者さんと話すのが怖くなってきた
- ミスが怖くて、手が震える
- 「辞めたい」が口ぐせになっている
そのまま続けると、ある日突然動けなくなることもあります。
環境を変えるのは、前向きな選択
職場を変えることは、リセットではなく“再設計”です。
- チームで支え合える店舗に異動する
- パートや派遣で自分のペースを取り戻す
- 時間を確保して副業やスキルアップに注力する
- チームで支え合える店舗に異動する
- パートや派遣で自分のペースを取り戻す
- 時間を確保して副業やスキルアップに注力する
あなたに合った働き方は、必ずどこかにあります。
一人薬剤師に向いていないと感じたなら、それを「見つけるチャンス」と捉えることが大切です。
転職相談は無料なのでとりあえず登録して話を聞いてみましょう!
薬剤師満足度の高いファルマスタッフがおすすめです。
ファルマスタッフについては他の記事で詳しく解説しているので見てみてください。

まとめ|一人薬剤師は確かに大変。でも続ける道も、抜ける道もある
一人薬剤師として働くということは、
業務を回す力も、精神力も、自己管理能力も問われる仕事です。
- 業務の仕組み化
- 他者とのつながりの確保
- 限界を察知したら環境を変える勇気
この3つを意識することで、「一人でも続けられる」人もいるし、
「ここではない」と気づいて次に進める人もいます。
あなたが今どちらの状況にあっても、
無理をせず、自分を守ることが何より大切です。
私自身、一人薬剤師として苦しい日々を経験したからこそ、
この記事が少しでもあなたの心を軽くできたらと思っています。
一人薬剤師という働き方を見直すきっかけになれば幸いです。


コメント